「地方創成」や「まちおこし」など、皆さんの周りでも地域を盛り上げようという活動が身近にあるのではないでしょうか。
特に地方においては「観光」というブランド価値を高めて、地域活性を目指す場面も多いです。
そういった悩みを抱えている観光地も多く存在するのが現状です。
今回は、「観光立国の正体」という本を読んで色々と気づいたことがあったので、それについてまとめてみたいと思います。
タイトルから皆さんどのように感じましたでしょうか?
私は、
なんだかタイトルからして難しそうな本だなぁ
というのが最初に感じた事で、果たして自分に読めるのかな?という心配がありました。
しかし、最初の数ページを読んだ瞬間にこの本の面白さに気づき、
あっという間に読み終わりました!!
今回はこの本の中から私自身が気づいたことや感じたことが沢山ありましたので、皆さんに紹介していきたいと思います。
目次
書籍「観光立国の正体」とは
まずこの「観光立国の正体」という本ですが、 山田桂一郎さんと藻谷浩介さんにより、2016年11月に新潮社から発行されました。
山田桂一郎さんという方は、「観光のカリスマ」として活躍をされている方です。
観光業界の再建に取り組まれている方で、その視点から次々に出される指摘は観光地に住む私にとても衝撃的な内容ばかりでした。
「地方から日本を再生させるための処方箋」としてとても面白い内容が詰まった本となります。
もしかしたら観光業界の方にとっては耳が痛い内容かもしれません…
ただ、それらの要因についてしっかりと受け入れる事で、「観光」というものの再発見が沢山ある本でもあります。
一生懸命頑張っても上手くいってないという事態から抜け出すために、正しい「課題」を見つけていきましょう。
日本の観光の問題点
冒頭、日本の観光の問題点という事について書かれています。
その中の一つとして
◇マーケティングの思想が無い
◇地域全体を豊かにしない
というところが問題点としてあげています。
山田さんが具体的に取り組んだ内容を例にして紹介をされているのですが、その中に「Mt.6」という構想がありました。
「野沢温泉」、「蔵王」、「草津」、「白馬」、「妙高」「志賀高原」の六つのエリアがスキー場外の連携として 「リゾート文化の創造と継承」を誓い合って組織されました。
しかし、その中では積極的に 取り組みをして行こうというエリアと、 自分達のやり方でやっていこうというエリアに分かれてしまったようです。
当時のHPがちょっと残っていましたが、現在はウェブページが閉じらていました。
その中でマウント6構造の考えを積極的に取り入れていた「野沢温泉村」や 「白馬」は外国人観光客を中心に人気のエリアとなっており、昔ながらの組織体制で 参加を取りやめたエリアは、 観光集客に苦戦をしているということが書かれております。
このことについては私はこの本の意見の部分のみしか知らないので、もしかしたら参加しなかった自治体にも何か理由があったのかもしれません。
ただ、Mt.6としては若い人を中心に取り組んでいったところと、そうでないところで大きく差ができたようです。
スイスの「ツェルマット」が素晴らしい
この本の中で、スイスの「ツェルマット」という地方を、 とても素晴らしい事例として取り上げております。
このスイスのツェルマット地方は、その住民達が地域に「愛着」と「誇り」を持っている事から、
「ライフスタイル自体を観光資源として商品化」
しているエリアになっているようです。
山田桂一郎さん自身の、スイス・ツェルマットでの観光局やNPO法人等での経験を基に、日本の観光地で必要な事が書かれている場面がこの本ではいくつか出てきます。
日本の観光地がうまくいっていない理由として、
満足度やリピーターが無い
という問題があります。
住民がいきいきしていないと、来た人もその雰囲気を感じ取り、満足度が上がらないようです。
スイスのツェルマットと逆で、その地域に住んでいる住民に「愛着」がなければどんどんと廃れていってしまうのですね。
日本の「 てしかがえこまち推進協議会 」が凄い
日本の「てしかがえこまち推進協議会」についても、この本では紹介されているのですが、この組織がとても凄いと感じました。
北海道の弟子屈町のでの取り組みになるのですが、そちらのエリアでは町内の様々な事業を一本化をするということを取り組んでいきました。
(これは本当に大変だったのではないかと思います)
こちらの協議会は住民なら誰でも参加がOKであり、地域で何かをやろうとするときはこの協議会が受け皿となり、各部会単位で取り組みを行っているということです。
てしかがえこまち協議会のHP
こちらの協議会ではツアーを受け入れるために株式会社を設立したそうですが、初年度から黒字となり、ツアー業界では珍しくうまくいってる事例との事です。
「旅行者」と「富裕層」の考えについて
この本では「旅行者」と「富裕層」の考え方について書かれていました。
「旅行者」についてですが、旅先での出会いは一期一会として考え、出会いを大切にしているとの事です。
これはとても分かる気がします!
私も地元のゲストハウスでアコースティックライブをやらせてもらっていますが、終わった後に話をするととても盛り上がります。
この本の中でも、その地域の人が笑顔で挨拶をしてくれるという事が非常に重要であると書かれていました。
出会いを求めて旅をするという部分では、地域の人との交流というのも非常に重要ですね。
次に、「富裕層」の求めている事ですが、富裕層は「体験」に価値を求めています。
そのエリアでの、「体験」をエンターテイメントという観点から考え、満足度を 得られるかという部分を重視しております。
体験が出来るのであれば、お金を出すことに関して何も抵抗はないようです。
しかし、よくやってしまう失敗として、リーズナブルに提供しよう考えてしまい、「体験」という価値を提供できていないという結果になってしまうこともあるようです。
発展していく観光地とは
継続して発展していく観光地を造っていくためには、まずは、
①地域全体が高収益体質化
②都市部などから移住者のビジネスが成り立つ
③若者の生活が落ち着いて、安心して子供を育てられる
という事が重要となります。
「安さ」だけをメインに提供しようとしてしまうと、外部から資本力の強い企業が入ってきたら簡単に取られてしまいます。
そういった点からも安易に価格面だけでやっていこうというのは、非常に危険な戦略なのだと書かれています。
やはり、地域でしっかり収益を作れる状態が必要なんですね。
行政の協力は必要なのか
次に、地域おこしに「行政」が介入することは良い事なのかというところについてもこの本では書かれていました。
行政は「予算主義」となっておりますので、補助金を出すことはできるが事業が単年で終わってしまうという問題があります。
確かに、「この事業は〇〇助成金でやっています」といった内容に関しては、その時の事業年度は盛り上がるのですが、しばらくすると全く動かなくなってしまう事もよくあります。
せっかく取り組み始めても単年度で終わってしまっては継続性がなく、持続性のある地域発展には繋がって行きません。
ただ、補助金も「マーケティング」や「文化財の維持管理」「景観修景」については有効な場合が出てくることがあるようです。
「行政」が介入することがダメという訳ではなく、「補助金」という特性を生かしてどう活用していくというのが重要なことかと感じました。
どういう商品に「価値」があるのか
次に、「どういった商品に需要があるのか」ということについてこの本では書かれております
大切なのが、「ポジショニングのある商品」という事になります。
ポイント
①買う必然性がある商品
②買う言い訳が立つ商品
というものがポジショニングのある商品として、価値が非常に高いものとなります。
今だけ、ここだけ、あなただけ!
というテーマをしっかり感じる事ができれば、その商品には「価値」が出てくるかと思います。
その地域で「共通したテーマ」を持つという事も重要です。
テーマがとういつされていれば、地域全体という広域ルートで集客をすることができます。
「地消地産」という言葉も本の中には出てきており
地元で消費するものは地元産をなるべく使っていく
という事で地域の価値を高める事が出来るのです。
何を求められているかを考える
観光地が町おこしでやってしまう失敗が、「まずはPRする」という事だそうです。
私もそれが重要だと思っていました(笑)
何が問題かというと、来る人が何を求めているのかという「トレンド観測」をしていないのにPRばかりをしてしまうので、結果リピーターになっていかないとの事です。
来る人が何を求めているのかという「トレンド観測」をして、その中で自分達の地域でどういった魅力があるのかという事をまず考えます。
それから「商品」を企画していくというマーケットインの発想というものは非常に重要になるようです。
観光業界だけの話ではないですが、相手が何を求めているのかを考えるのはとても大切な事ですね。
具体的な例として、宿泊施設については、設備は古くても少しの改築とネット発信を行うことにより、外国人客なら増やすことは可能ということが書かれております。
これは私の町でもそういった事例が起こっていて、おじいさんおばあさんがやっている古びた旅館が外国人旅行客にとても人気であるということがあります。
聞いたところでは、古びた旅館の方が日本に来たという雰囲気を味わえるうえに、 ご年配の従業員の方とのコミュニケーションを取るという事が非常に満足度が高くなっているということです。
全てにおいておしゃれで新しくする必要はないんだなぁと感じました。
観光地から「感幸地」へ
私がこの本を読んでいて、とても心に響いた部分になります。
一番大切なのは旅行者の住民も幸せを感じられる「感幸地」への発展をしていくことが大切だと書かれていました。
この本で書かれている事が全て詰まった言葉ではないかと思います。
値段や綺麗さではなく、「幸せを感じれたか」という事が一番大切な事です。
街づくりをしていく上では、これが一番初めに考えないといけない事なのではと感じました。
ポイント
「感幸地(かんこうち)」を目指す
まとめ
今回「観光立国の正体」を読んで、色々と気付きや発見が沢山ありましたので紹介させて頂きました。
観光地で何かチャレンジをしてみたいという方の何か参考になれば幸いです。
非常に面白い本なので、ご興味がありましたら是非ご覧ください
今回も最後までご覧いただきありがとうございました。
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